序章:審判を下されるその日【自己破産と私】

自己破産

こんにちは、黒P編集部です。

今回は趣向を凝らし、実体験に基づいた起稿を元に取材と絡めて記事を起こさせていただきたいと思います。

ウェブ小説っぽくなってしまいますが、何卒最後までお付き合い下さいませ!

運命の日、G氏との待ち合わせ

出典:フリー素材ぱくたそ(www.pakutaso.com)様より

とある日の午前8時30分。某県にある某庁舎ロビーで私はG氏と待ち合わせていた。

 

待ち合わせの時間は9時30分だったが、念には念を入れた上に更に余裕を持って1時間前に到着したのだ。

 

本来の自分は人と待ち合わせる時に、このような時間の使い方はしない人間である。

 

ただこの日ばかりは自分にとって人生を左右する大事な日だった為に、抑えきれない緊張感がそうさせたのかも知れない。

 

クリーニングから帰ってきたばかりのスーツに地味なネクタイ。

 

数枚の資料とハガキしか入っていないカバンも昨日買って来た新品だ。まるで何処かの企業に面接に行くようなイメージで私はこの日を迎えたのだ。

 

午前9時を過ぎた辺りから来庁者が1人、また1人と現れロビーのソファーに腰掛けてゆく。中年のサラリーマンだろうか?

 

酷くくたびれたスーツが印象的なその男性が声を掛けてきた。

 

出典:フリー素材ぱくたそ(www.pakutaso.com)様より

男「◯◯さんですか?」

 

私「あ、違います。」

 

男「そうですか、すいません、すいません、失礼しました。本当にすいません。」

 

何もそこまで謝らなくても、と言うくらい頭を下げるその男性の声は微かに震えていた。

多種多様な人で溢れ返る異質な空間

出典:フリー素材ぱくたそ(www.pakutaso.com)様より

その光景を横目で見ながら20代前半だろうか?ピンクのキャミソールから露出したタトゥーが目を引く、ビーチサンダルの若い女性がスマホを片手に誰かとLINEをしている。

 

そして何分経っただろうか?

 

気が付くとロビーはソファーが足りないほどの人で溢れていた。これから仕事なのだろうか?現場作業着の男性が大きな声で電話している。

 

その行動を迷惑そうに眺める高齢のお年寄りの夫婦。子供を抱き抱えた若い女性やホスト風の派手なスーツで身を固めた男性までいる。

G氏、遂に現れる

出典:フリー素材ぱくたそ(www.pakutaso.com)様より

G氏「ご無沙汰しております。Gです。」

 

不意にG氏が後ろから話しかけて来た。

 

私「あ、おはようございます。今日は宜しくお願いします。」

 

初めて会った時とは印象が大分違うな?と思いながらも、ありふれた挨拶を交わし私は少しだけ頭を下げた。

 

G氏「私はこれから手続きをして参りますので少しお待ちになって下さい。」

 

G氏はそう告げると庁舎の二階へと階段を登っていった。G氏の他にもスーツ姿の男性が何人も二階へ登っては降りてくる。

 

私がG氏と会うのは半年前に一度会ったきりの今日で2回目だった。

印象が変わったのは季節が変わり最後に会ったのが冬だったからだろう。この日は9月初旬で彼はワイシャツにネクタイ姿だった。

謎のプリント用紙が配布される

出典:フリー素材ぱくたそ(www.pakutaso.com)様より

暫くすると庁舎の職員だろうか?中年の女性がロビーにいる我々に一枚のプリント用紙を渡し始めた。

コピー用紙のような白い紙では無く、グレーのわら半紙。

 

その中身は細かい字がビッシリと敷き詰められ、右上には手書きの女の子の顔と流れ星の絵が描かれている。

 

そうこうしているとG氏が帰ってきた。

 

G氏「これから二階の第二講堂へ行ってもらいますのでご準備は大丈夫ですか?」

 

私「準備って、何かあるんですか?」

 

G氏「いや、特には無いですがトイレなどは今のうちに済まされたほうが…」

 

私「そんなに時間が掛かるんですか?」

 

G氏「いや、時間は15分くらいです。」

 

私「あ、そんなもんなんですか?」

 

G氏「そうですね。ですので宜しければ参りましょうか。」

 

そう言われ、私はG氏と共に2階の講堂へと向かっていった。

講堂へ向かう足取りも重く…

出典:フリー素材ぱくたそ(www.pakutaso.com)様より

時刻は9時45分…

 

あと15分で私は人生の岐路に立たされる。そんな悲壮な思いからか、講堂へ向かう階段がとても長く感じた。

 

二階の廊下にはロビーと同じソファーが等間隔に設置され、先程までロビーにいた人達が続々とやってきた。

 

G氏「それでは講堂の中でお待ち下さい。席順等は決まっておりませんので空いている席にお座りになって貰って結構です。」

 

G氏はそう告げると自身は再び一階へと階段を降りていった。

 

廊下に面したコンクリートの壁に手書きで「第二講堂」と紙が張ってある。その隣に木製の木の扉が半分開いている。

 

中に入るとイメージが先行したからなのか、先入観なのか、学校の教室のような狭さにまず違和感を覚えた。そこに続々と人が入ってきては少し迷いながら皆、自分で選んだ席に座ってゆく。

講堂はより異様な空間となっていた

出典:フリー素材ぱくたそ(www.pakutaso.com)様より

私の隣には先程のくたびれたスーツのサラリーマンだった。

 

改めて周りを見渡すと老若男女、様々な年代の人が集まっていることが分かる。免許センターの講習室と言えば分かりやすいだろうか?

ただ決定的に違うのは、ある者はうつむき、ある者は隣の人と喋りだし、そしてある者は無関心とばかりにスマホでゲームをやっている。中には大声で電話をする者までいた。

 

そして私はその光景が持つ違和感と自身の好奇心の整理をしながら、自分の置かれた立場を自問自答し、ただただ時間が来るのを待つしかなかった。

本稿のテーマは…

出典:フリー素材ぱくたそ(www.pakutaso.com)様より

みなさん、ここまで読んで頂いて何を想像するだろうか?

 

私の人生に於いては間違いなくターニングポイントになるであろうこの日、この庁舎に集まった人々はみんな自己破産の申し立てを行い、今、まさにその判決が下るかどうかの瀬戸際の人間なのである。

 

つまりは最終判決日である。庁舎とはすなわち地方裁判所であり、G氏は私の依頼した代理弁護士である。

 

冒頭で書いた様に私は「裁判」と聞いて少なからず構えてこの日に望んだのだが、その実態と現実にはあまりのギャップがあり驚きが多かった。

 

そして様々な人間性や人間思考も見聞することが出来た。

 

これから少しずつ私が経験した「自己破産」について、その流れや経緯などを書いていこうと思う。

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